母なる女性から男が造られると言うが,
生物として発生学的に眺めると,人間も性別を問わず最初は女性器の形をしていて,まだ妊娠が始まって間もないころだが胎生としての7週を過ぎると,精巣決定因子が存在する場合には男性ホルモンが優位になる.その結果として,中性だった女性器は男性器へと形態を変えて雄に変わっていく.やはりイブの骨で作られたのがアダムなのだ.つまり開いていた陰裂が変化して閉じた形跡として,男性の肛門から陰嚢(のう),包皮にある縫い目(縫線)があるのだ.女性器と男性器とを比較すると,陰唇は陰嚢と包皮,クリトリスとペニス,卵巣と精巣というように,役割は似通ってはいるものの成長過程において,端から見ても明らかな男女に姿を変えてしまう.機能が異なれば,動作も別になってゆくのだろう.
このために性的な興奮とともに自分のペニスが勃起することを実感している男性には,クリトリスに刺激を加えると女性の快感を高めることなると思い込んでいる雄が多いのだろう.またAV男優が女優に対して,これでもかこれでもかと性器を刺激して愛撫を続けるアダルト動画の映像に影響されていることもあろう.ところがこんな無理な性器の取り扱いや愛撫の結果として,ときには陰核包皮の裂傷ということが発生することもあるのだ.たまたまパートナーの爪が伸びていた場合には,女性側としてもたまったものではない.「いい加減にしてよ!」と声を荒げて抗議すべき状況である.女性がただ身を預けて耐えていたのであれば,もうこれはDV(いやSex傷害かも)である.
ところが実際には,発生学的には共通した器官であるはずのクリトリスとペニスの大きな違いは,性反応にあるのだ.男の場合には,性的興奮が高まると勃起するのだが,女性側のクリトリスについては性的刺激によって勃起はするが,やがてクリトリスは後退して,陰核包皮の中に埋没し,隆起に触れることができなくなってしまう.そんな女性の性器の特徴まで知らない(雄だから雌の実態まで知らないのは当然だが)男どもは,クリトリスに触れないのは自分の責任であるかのように,さらに強い刺激を加えてしまった結果として,女性に裂傷が発生してしまうことがあるから注意しなければならない.
もっとも大きな違いは,雄には射精があるが,雌にはそれがない(時には潮吹きをするケースもあるが).雄と雌の役割が違うのだから当然かもしれない.
まだ女性の性反応については,不思議な現象がいろいろと存在しているのだ.たとえば,性的な興奮が高まってくると女性の子宮は挙上し,テンティング(テント状)とかバルーニング(風船状)ともいうようだが,膣が膨張するのを知っているだろうか.これを男性の場合にたとえると,興奮すると射精直前に「僕の性器はどこかへ行ってしまった?」となるのだが.立場を換えると,男性側には急に緩さを感じることになる.つまり男性器を締め付けるのが名器ではなく,むしろ緩さを感じた時にこそ,2人は性的に満足の得られる極致に近い状態をさまよっているのである.
それにもかかわらず,男性は出産後のパートナーに,知らずに「緩くなった」などと失礼ないい方をして女性を傷つけることが多いようだ.もちろん,重さで3kgにも近い赤子が膣を押し広げて生まれてくるのだから,膣壁の離開によって多少の緩さを感じるのは仕方のないことだが,Sexで緩さを感じたときこそ,2人は容易には離れ難い関係に一歩踏み込んだことを知っておくといいだろう.
このように普段は常識と思い込んでいることが,実際には性科学においては非常識なものであることは決して稀なことではないようだ.これだから「数の子天井」とか「ミミズ千匹」だというのも,なんのことはない,性的に興奮していない女性器に起きる現象(不感症)ということである.少ないケースを貴重なものとして価値をつけた伝説の誤りである.

