<これらはSex(性行為)によって感染する疾患だから性病と呼んでいた.ところが近ごろは性的接触により感染する新しい疾患が増えたため,性病よりも広い意味で総称した性行為感染症(性感染症 STD:Sexually Transmitted Diseases)と呼び,STDにはこれまでの性病に加えて,性器ヘルペス,尖圭コンジローム,トリコモナス膣炎,クラミジア感染症,カンジダ膣炎,エイズなどが含まれている.br>
< またSTDはSexによって感染する病気だが,性交渉に到らなくても,性器と口や咽喉の接触によって感染するが,手や口の接触が多い母子間や,妊娠中に子供が母親の体内や,出産のときに産道で子供に感染することもある.
このようなSTDを完全に予防することはできない.性交渉に到る深い関係となったカップルの一方が感染すると,パートナーにも移る可能性が高いから,相棒ひとりが注意していても安全とはいえない.もし感染の疑いのある症状が出たら,パートナーも一緒に診断を受けた方がよいだろう.br>
クラミジアは細菌とされる小微生物(直径300〜1000nm)で,グラム陰性細菌に類似した微生物である.しかし,普通の細菌やウイルス,リケッチアとは異なる病原体で,クラミジアは不完全だが物質代謝系を持ち,抗生物質による治療が効果を発揮する.またクラミジアは細胞内に自身のエネルギー産生系を欠くためにヒトや動物の細胞内に寄生し分裂増殖する,偏性細胞寄生性の生物である.
クラミジアは細胞の食菌作用により宿主細胞に取り込まれ,この段階では感染性のある基本小体(EB:elemental body)と呼ばれる直径約300nmの小粒子だが,細胞内で非感染性の増殖型粒子である網様体(RB:reticurate body)となり分裂増殖し,再び基本小体(EB)に変化するという独特な増殖環をもち,この増殖サイクルは2〜3日間である.
<◇フェラチオにより感染する性感染症br>
たとえばクラミジア感染症の病原体は,クラミジア・トラコマティスだが,目の病気だったクラミジアが,いつの間にか性感染症(STD)の代表になるほど蔓延しているのである.現在では国民病といわれるほどに大きく広がっており,この17年間(1987年〜2003年)に東京都内の産婦人科においてクラミジアの疑いで標本を検査した結果の陽性率は,11.1%に達していた.なかでも10代後半(15〜19歳)では陽性率が26.5%と高くなっている(東京都予防医学協会調べ).調査対象が産婦人科に来訪した女性ということだが,その検出率が1/4という高さには驚くべき状況といえるだろう.また伝統的な淋菌についても12年間で6.0%,10代後半(15〜19歳)が11.5%とやはりトップの陽性率となっている.もう10代のSexをタブー視して放置しておける段階ではない.
ところでクラミジア感染症は性器同志を接触させなくても,「フェラチオ(男の性器に口をつけて刺激する擬似Sex)によっても感染する」のである.Sexは性器を結合することだけではなく,フェラチオのような擬似行為によって,パートナーの咽頭からクラミジアが性器に移行し,それがSexによって感染して広がっているのである.
なんとクラミジアや淋菌の罹患率を押し上げている原因は,フェラチオによる咽頭感染である.これまでクラミジア・トラコマティスは円柱上皮がある眼瞼結膜,尿道,子宮頸管,直腸などに感染することが知られていた.Sexをフェラチオからはじめて,男が膣外射精(外出し)としてパートナーの体に精液を掛けるようなアダルト・ビデオ(AV)の影響を,10代の厨房たちが性教育代わりに学習した結果によるものだろう.
また岐阜大学の三鴨廣繁助教授らが2004年に実施したSex行動の調査結果からも,Sexの際にオーラルセックス(口腔性交)を必ず行なうと答えた女性は30歳以上では23%だったのに対して,20歳未満の厨房の場合には65%だったということからも10代がSexにおいて口腔性交が一般化している現実がわかる.さらに,オーラルセックスをしない,したことがない女性は9.6%だから,すでに10代でSex革命が起きているのだ.
このような性行動の多様化が性感染症の拡大に大きく影響しているのだ.前日赤医療センターの小島弘敬泌尿器科部長は,咽頭を感染源とする淋菌尿道炎が約半数に達し,生殖器の淋病の約30%では咽頭からも淋菌が検出されるとしている.しかも咽頭感染があっても,喉が痛いとか発赤するなどの自覚症状がなく長期間感染源となること,咽頭には常在菌が多数あるため診断がむずかしく,治療を試みても尿道や子宮頸管などに比べて治りにくいことが問題点とされている.クラミジアによる咽頭感染もほぼ同様な結果となっている.
粘膜の存在する部位はどこでも性感染症の危険があると考えるべきで,眼瞼結膜,咽頭,性器,尿道,肛門などは感染する危険部位として認識した上に「性感染症予防にコンドーム!」という警告メッセージは,フェラチオや肛門性交などでも使用するように習慣つけなければならない.ところが実態は,厚生労働科学研究班(木原雅子班)の調査によると「肛門性交やオーラルセックスでコンドームを使わない人が大半」との結果が報告されている.Sex時に感染症から「自分のカラダは自分で守る」を原則として,Sexについての常識を見直す必要がある.
さてクラミジア感染症の潜伏期問は2週間前後だが,発症すると症状は,尿道口から少量の膿が出て,排尿痛は弱く,排尿不快感程度のこともある.女性の場合,クラミジアは子宮頸管に感染するが,症状はほとんどなく,気がつかないことが多く感染源となりやすい.なお治療には,テトラ・サイクリン系の抗生物質が有効とされている.
クラミジア感染症の疑いのある症状が出たら,泌尿器科,産婦人科などで検査を受けるとよい.
< 検査は初尿や尿道擦過綿棒,子宮頸管擦過綿棒などを用いて,遺伝子検査法または抗原検査法が行なわれるが,綿棒を用いるから,多少の痛みと出血を伴う場合もある.br>

